カゼミーロ(前編) 〜"頼り"と"活かし"〜 #33
レアルマドリーのChampions League 3連覇。
今回はカゼミーロへの評価の前提として、ジダン・マドリーのサッカーを多分に理解して頂きたいと思います。
ジダンは3連覇をする上で、3つのフォーメーションを使い分けました。
4-3-3
4-4-2ダイヤモンド
4-4-2フラット
彼は、CL3連覇という偉業を成し遂げても尚、「戦術がなく個人の力に頼っている」と言われてしまいます。が、本当にそうでしょうか。そんなチームがCL3連覇を成し遂げられるでしょうか。
彼がこの3つの形を運用することは、彼の「戦術」に依存していると思います。
ジダンの戦術とは「個人の能力を最大限に発揮させること」だと筆者は理解しています。
例えば、写真2枚目の4-4-2ダイヤに関して
(*4-3-3はジダンが編み出したフォーメーションでは無いのでここでは省かせてください)
当時からイスコは、トップ下以外の場所では輝けず、選択肢の多い中央でボールを受けてこそ真価を発揮すると言われていました。
ジダンが、そんなイスコの我儘なプレースタイルに歩み寄ることで、イスコは花を咲かせて見せました。
さらにこの形、見ての通り両サイドに広大なスペースがあります。これには、両SBであるマルセロとカルバハルの特徴が大きく関係しています。
画像の通り、自陣でボールを持つと、すぐにクロースとモドリッチはピッチの横幅を広く取り、CBからボールを受けやすい位置に動きます。
そうすることで、マルセロとカルバハルは高いポジションを取り、CBからのパスを受けに行くというタスクを省略することができます。
彼ら2名は、この11人で作るフットボールの終着点であるクリスティアーノロナウドが好むボールを一番に熟知した2名です。そんな彼らをよりゴールに、ロナウドに近い位置に置くことを重要視したのが、このフォーメーションです。
ロナウドの好むボールを理解した2名がロナウドに近い位置にいるということは、彼にとっても輝きやすい環境になったと言えるでしょう。
残りのメンバーについても同様に、個性を発揮させようという意図が見られますが、次のフォーメーションの説明に。
画像3つ目の、4-4-2フラットの形です。
この11人で作るフットボールでも、終着点はクリスティアーノロナウドです。それは変わりませんが、過程が大きく変わります。
この形を採用する時は、ある程度相手に攻め込まれ、受け身に回ることを想定する時です。
先程説明した4-4-2ダイヤモンドでは、攻撃から守備に展開が移った際、下の画像のように変形させる必要があります。
攻撃
↓
守備
攻撃と守備の形の変更には時間を要しますし、誰1人としてポジショニング変更をサボることは許されません。
そこでジダンは、守備に回る時間が長い時は、最初から守備の形を変えずに攻撃も済ませてしまえばいいじゃないか、という発想に至ったのでしょう。
守備力に欠けるイスコ、ダブルボランチになると凡人になるカゼミーロを外し、縦の速さを持ち味とし、守備に奔走できるアセンシオとルーカスバスケスをワイドに据えたのです。
相手からボールを奪うとすぐさま一直線に相手陣内へ襲いかかり、そのスピードを落とすことなくクロスを放り込めるようにするため、右利きのルーカスは右サイド、左利きのアセンシオは左サイドを担当します。
このフォーメーションに於いてもまた、ジダンは個人の特徴をよく捉え、その選手がどういった起用法の場合に強みを存分に解放できるのか、ということがよく考えられています。
この戦術眼は、あくまで筆者の主張でありますが、この説明後、もう一度ジダンに対し「個人に"頼った"サッカーだ」などと言えるでしょうか。
たしかに個人の能力に依拠する面の多いサッカーではありますが、折角個人が個として他より優れているのだから、それを"活かす"という事は非常に合理的と筆者の目には写ります。
さて、攻撃の話ばかりしてきました。
では、ジダンはどうやって守っていたのでしょうか。
漸く今回の主役カゼミーロ、登場です。
後編へ。