カゼミーロ 後編 #34
前回のブログで、ジネディーヌジダンの描く戦術というものを理解して頂いたかと思いますので、あの戦術の中でカゼミーロが一体どういった役割を果たすのか。本題に入って行きたいと思います。
ジダンの守備戦術とカゼミーロとの関係
それは、ジダンのカゼミーロへの依存と言うのが正しいでしょう。
前回述べたように、ジダンは3つのフォーメーションを1試合の中でも使い分けるため、特にパターン化された守備を保持していないように思います。
マンチェスターシティは、4-1-4-1というフォーメーションを絶対に崩しません。選手全員がこのフォーメーションの中で機能するように組織立てられています。そのため、ポジションごとに与えられた守備のタスク、ポジショニングが明確です。
対してジダンのマドリーは、決まった型を持ちません。故に、ポジションごとの固定のミッションも存在せず、マンチェスターシティと比べると守備はシステム化されていないことが分かります。
そこでジダンが使う必殺技が、カゼミーロであり、ルーカスバスケスという訳です。
組織された守備ができない代わりに、彼らのような単独での守備能力に長けたプレイヤーを使うことで、至らない部分を補うというわけです。
では、カゼミーロの守備の何が凄いのか。これは、危機察知能力、ポジショニング、自己犠牲を払う勇気、空中戦など、様々ありますが、今回は1つ強調しておきたいポイントがあります。それが、彼の1対1の強さです。
ドリブルで仕掛けてくる相手からボールを刈り取るという点において、彼の右に出る者はいないでしょう。それは、ファンダイク、ラポルテ、シュクリニアル、クリバリ、ラモスといった現在評価の高いCBと比べても、です。
前回の4-4-2ダイヤモンドを思い出してみて下さい。あのフォーメーションでは、両サイドバックが非常に高いポジションを取るので、ボールを失った際にカウンターを受けるリスクが非常に高く、実際にそうなることは多々あります。
それに加え、クロース、マルセロといった選手らの守備意識の低さを鑑みると、とてもじゃないがカウンターなんて防げるようには思えません。
しかし、それをたった1人で止める力を持っているのがカゼミーロなのです。これは、戦術だの組織だのではなく、完全なる個です。涼しい顔をして1人で相手の攻撃をストップさせ、マイボールにしてしまうのです。
彼自身しか知り得ない足を出すタイミングであったり、立ち方だったりがあるのでしょう。彼のセンスです。彼の個です。
逆を言えば、マルセロとカルバハルは、カゼミーロが後ろで構えていなかったらあのような高いポジションを取ることは出来ないでしょう。「カゼミーロがいる」という安心感がもたらす戦い方なのです。
故にジダンは、カゼミーロがいないとそれだけでフォーメーション変更や戦い方の変更を余儀なくされます。
2年前までのマドリーがロナウド依存と言われ、今のバルセロナがメッシ依存と言われ、それと同様の表現を今のマドリーに与えるならば、「カゼミーロ依存」がそれに当てはまるのでしょう。