怠り日記 #36
日記タイトルには、浪人生という立場ながら勉強から回避されたい思いと、予備校生活の半年が過ぎる今も話せる友のいない病的状態を快方へと向かわせたいとの思いが込められています。
つい先日のことである。
コンビニへ向かおうと廊下に出ると、恐らくは同じクラスなのであろう方から
「英語のテキストを貸してください。忘れてしまって、コピーしたいので。」と。
ほぼ初対面の人間から物を借りようという努力に、賞賛と若干の不快さを覚える。
一旦は、黒い顔色のままそれを渡す。
当然、相手が僕の元の居場所を知る訳もなく、コンビニへ向かうつもりだった僕だが彼のコピーの完了を待たねばならなくなった。
無益な時間を過ごすことに憤りを覚え、何か有意義な時間にする方法はないか考える。
一つ、浮かんだ。
彼の要求する箇所は僕自身も、今すぐにでは無いにせよ、いつかはコピーが必要な箇所。この機会に済ませてしまおう、と。
その旨を伝え、機械の前まで付いて行く。
まずは彼が用を済ませ、僕も始めようとテキストを受け取ると、彼は僕の分も印刷してくれていた。
礼を言い、代金の20円を払おうとすると
「借りてしまったので20円くらい良いですよ」と。
改めて、初対面の人間に対し出来ることでは無いなと感嘆する。
普通であれば断り、20円を渡すまでが流れなのであろう。
僕は、真っ白な笑顔でこう言う。
「有り難く」
相手も僕のまさかの返事に驚いた様子だったように思う。しかし、一番驚いているのは僕自身だ。ほぼ間を置くことなしに無意識にこのフレーズが出てきてしまう自分に心底落胆する。
それ以来、彼が話しかけてくれることは一切無い。
なるほど、私は怠ることすら怠るのか。
そう、痛感せられた出来事だ。